乾癬とは
乾癬とは
欧米において乾癬の患者さんは昔から多かったのですが、日本では欧米ほど頻度の高い皮膚病とはいえませんでした。ところが、食生活の欧米化に伴い近年では日本でも患者数は増え始め、現在推計ですが約10万人~20万人(約1000人に1人:0.1%)といわれています。好発年齢は20~50歳代で、男性に多い病気です。乾癬の皮膚症状は、皮膚が赤く盛り上がり、表面には銀白色の鱗屑(ふけ状のカサカサ)が多量に付着しています。
頭や肘・膝などのよく擦れる場所に皮膚症状が出現しますが、徐々に拡大し紅皮症状態(全身が赤くなり、病変で覆われる)に至る場合もあります。かゆみに関しては個人差があり、軽度から激しいかゆみを訴える人もいます。爪も病変が生じ、白く濁り、表面が凸凹としてきます。このような皮膚や爪症状のほか、関節の痛みや赤み、腫れや変形、ときに発熱や全身倦怠感を訴える場合もあります。さらに、心筋梗塞などの独立した危険因子であるとも指摘されています。このようなことから、海外では、乾癬患者の平均死亡年齢は非乾癬患者より6歳短いといったデータも出ています。
また、この病気は人にうつる病気ではありませんが、見た目、痒み、関節痛などから、日常生活での支障や精神的ストレスは計り知れず、その程度は癌や心疾患などと同等という報告もあります。
乾癬の原因
皮膚の最も外側の表皮の代謝サイクルが短くなり、角化細胞が鱗屑となってはがれ落ちます。これに炎症が加わり皮膚は赤く盛り上がってきます。正常な表皮細胞は28日サイクルですが、乾癬の場合は4~5日と極めて短く新陳代謝が病的に亢進した状態になっています。乾癬を起こす原因は今のところ完全にはわかっていませんが、遺伝的な要因を有する患者さんに外部からの何らかの要因(感染や精神的ストレス、薬剤、タバコなど)が加わることで、免疫に異常が生じ炎症が起きることが判ってきました。
乾癬の治療
乾癬の治療は大きく、4つに分けられます。
1.外用療法
外用療法は乾癬治療の基礎となり、ビタミンD3外用薬とステロイド外用薬が主体となります。最近では、これら2つの薬を配合した薬もあり、1日1回の外用で済みます。これらは、臨床効果も高く、外用回数が少ないため、患者さんの外用の負担が改善されてきています。
2.光線療法
光線療法の作用機序は、病因となる細胞が取り除かれる点と炎症を抑える細胞の誘導などが考えられています。使用する光線の種類で2つに分類できます。
a.UVA(紫外線A波)を使用
PUVA療法:ソラレンという紫外線に敏感になる薬剤に長波長紫外線(UVA)照射を組み合わせたものです。
→当科では行っていません。
b.UVB(紫外線B波)を使用
UVB療法は、ソラレンなどの薬剤を使わず、中波長紫外線(UVB)照射を行います。311~312nmのナローバンドUBVと308nmのエキシマライトがありますが、当院ではエキシマライトによる光線療法を行っています。エキシマライトによる治療は、週に1~2回の照射治療を行います。しかし、当科では小型の機器を使用しているため、全身に皮疹のある患者さんでは、全身型の機器のある病院へご紹介させていただく場合もあります。
3.内服療法
内服療法としては、免疫抑制作用を有するシクロスポリン(ネオーラル®)や角化異常症治療薬でビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン®)、免疫調整薬であるアプレミラスト(オテズラ®)、JAK阻害薬であるデュークラバシチニブ(ソーティクツ®)などがあります。これらの中で、免疫調整薬であるアプレミラスト(オテズラ®)は有効性が高く、副作用が比較的少ない薬剤であり、当院でも使用しています。
アプレミラスト:乾癬治療における世界初の経口ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害剤で、免疫を調整する薬剤。副作用として、悪心や下痢、頭痛などが生じる場合があるが、多くは程度が軽く副作用を緩和する飲み薬を併用して対処します。
4.生物学的製剤による治療
2010年から抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤であるインフリキシマブ(レミケード®)やアダリムマブ(ヒュミラ®)など、既に関節リウマチなどで使用されていた生物学的製剤が、乾癬に対し適用追加があり、その後、様々な薬剤が使用可能となっています。当院では、事前検査が行えないため現時点では、本薬剤による治療はできません。重症度が高く、生物学的製剤による治療が必要な場合は、連携施設へご紹介させていただきます。
まとめ
乾癬は治りにくい慢性の病気ですが、治らない病気ではなくなってきています。当院では、乾癬の患者さんが快適な社会生活を安心して送れる毎日をサポートするため診療を行っております。現在の治療に満足できていない、今後に不安を抱いている、少しずつ皮膚症状が悪化し、治りにくくなっている、病巣部が拡大し隠しきれない、毎日の外用治療に疲弊しているなど、いろいろと悩まれていることと存じます。気軽に当院にご相談にいらしてください。